智弁和歌山の優勝で閉幕した2026年夏の甲子園:高校球児へ、そして「冷やす」の常識が変わった話

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2026年夏の甲子園は、智弁和歌山が健大高崎を4-3で破り、5年ぶり4度目の優勝を果たして閉幕しました。
8回に一度は逆転を許しながら、スクイズと暴投で再逆転した劇的な決勝は、多くのファンの心を揺さぶりました。
猛暑の中で戦った3363チームの頂点に立った智弁和歌山の選手たち、そして準優勝の健大高崎をはじめ、全国の高校球児の皆さん、本当によく頑張りました。
三重の古川投手のように故障と向き合いながらチームを支えた選手もいましたし、花巻東の萬谷投手のように指がつって降板する姿もあり、過酷な戦いが伝わってきます。 
そんな彼らの姿を見て、「どうすればケガを減らし、回復を早められるか」を改めて考えさせられます。

昔は当たり前だった「投球後の肩のアイシング」

以前は、投手がマウンドを降りたあと、ベンチ裏で肩を氷嚢や保冷剤で冷やす姿がよく見られました。 
「投げたら炎症する→冷やして炎症を抑える」という考え方が、長く定着していたからです。 
実際、指導現場でも「投球後は必ずアイシング」というルールがあるチームも少なくありませんでした。

最近はあまり見なくなった?その理由

しかし最近は、高校や大学、プロの現場でも「投球後に必ず冷やす」という光景は減ってきました。 
理由の一つは、「普通の投球では、肩に強い炎症が起きているわけではない」という研究結果が出てきたことです。 
もう一つは、「冷却すると血流が落ちて、回復に必要な循環や組織修復を遅らせるかもしれない」という考え方が広がったことです。 
その結果、「投球後は軽い運動でクールダウンして血流を保つ」方が、回復に有利だとする現場も増えています。

ここから応急処置の「常識の変化」へ

この「投手の肩」の変化は、実はスポーツ外傷全体の応急処置の考え方の変化とリンクしています。 
かつては「RICE(安静・冷却・圧迫・挙上)」が黄金律で、ケガをしたらまず「Ice(冷却)」でした。 
しかし近年は、「PEACE & LOVE」という新しい考え方が注目されています。 
ここでは、冷却(Ice)が必須ではなくなり、「Avoid anti-inflammation(炎症を過度に抑え込まない)」という項目が入っています。

PEACE & LOVE とは何か(簡単に)

PEACE:

  • Protection(保護)
  • Elevation(挙上)
  • Avoid anti-inflammation(炎症を抑えすぎない)
  • Compression(圧迫)
  • Education(正しい知識)

LOVE:

  • Load(適切な負荷)
  • Optimism(前向きな姿勢)
  • Vascularisation(血流を促す動き)
  • Exercise(運動)
要するに、「炎症を敵視して全力で消す」のではなく、「必要な炎症は回復の入口として残しつつ、やりすぎだけ避ける」という発想です。

現場での使い分け:冷やすべき時、冷やさなくていい時

  • 受傷直後で、腫れ・熱感・ズキズキした痛みがある場合:痛みをコントロールする目的で短時間の冷却は有効です。
  • 熱感がなく、腫れだけが長引く場合:冷却にこだわらず、圧迫・挙上・適切な動きを重視します。
  • 術後や重度の外傷:医師の指示に従い、冷却は補助的に使います。
  • 投手の投球後:明らかな痛みや熱感がなければ、無理に冷やし続ける必要はありません。

結び:ケガの「常識」は変わる

甲子園で戦った選手たちは、短い夏を全身で戦い抜きました。 
その後のケアは、「昔の常識」ではなく、「今のエビデンス」で考えることが、結果的にケガを減らし、復帰を早めることにつながります。 
「冷やすのが正義」ではなく、「なぜ冷やすのか、いつ冷やすのか」を一緒に考えられるチームが、強いチームになるはずです。
投手の肩のアイシングが減ったことは、単なる流行ではなく、スポーツ医学のアップデートの結果です。 
応急処置も同じで、「RICE→PEACE & LOVE」のように、時代とともに更新されていきます。 
高校野球の熱い夏をきっかけに、ケガのケアや応急処置の「なぜ?」を、もう一度見直してみませんか。